2018年3月7日、『ウルトラマンネオス』がHDリマスター2.0Vの最新仕様による高画質映像でのBlu-rayボックス発売を記念して、ウルトラマンネオスと一心同体になるHEART隊員カグラ・ゲンキを演じた高槻純さん、ウルトラマンネオスを演じたスーツアクターの岡野弘之さん、そしてウルトラセブン21を演じたスーツアクターの寺井大介さんの最強トリオが結集!21世紀突入を目前にした西暦2000年の初登場から18年の歳月を経て、初めて明かされる役への思いと道のり、そして数々の制作秘話を一挙に語っていただきました。さぁ!あなたも『ウルトラマンネオス』の未知なる世界へ羽ばたこう!!
カグラ・ネオス・セブン21 出演のきっかけ
高槻:僕は、いわゆる普通のオーディションを受けて決まりました。これは今だから正直に言うと…“ウルトラマン”って、ものすごいビッグタイトルじゃないですか。だから、自分なんか受からないだろうって思ってたんです。でも、振り返って考えてみると、逆に気負い無く、ごく自然体で臨めたという気がしていて、敢えて芝居を作ったりしなかったのが、プロデューサーや監督の考えていたカグラ像にうまくハマったんじゃないのかなと、思っています。
岡野:僕は『電光超人グリッドマン』でグリッドマンを演じていた経緯もあって、パイロット版でもネオスを演じていたんです。その後はテレビシリーズ化の話もあったんですが、ステージショーを中心にした展開に移行していきましたね。熊本の三井グリーンランドから始まって、1995年の『ウルトラマンフェスティバル』では、ネオスとセブン21が主役でした。翌年に『ウルトラマンティガ』の放送が始まり、平成ウルトラマンシリーズが3年続いた終わり頃に、改めて新作の話が持ち上がって、再びオファーに至りました。
寺井:僕は円谷プロのアクションチーム「キャスタッフ」に入って1年くらいの頃で、リーダーだった岡野さんから声を掛けられたんですが、最初は断ったんです。もちろんウルトラマンを演じてみたい気持ちはあったんですが、当時はまだまだもっと練習しなきゃとか、試行錯誤の真っ只中でしたから。
岡野:寺井を選んだのは、あの頃、キャスタッフも世代交代を図っていく時期だったからなんです。そのタイミングにうまくはまったというのもあるし、僕の中のウルトラマンを演じる上での技術や体型の合格ラインがあって、そこに合致したというのもありましたね
カグラ・ゲンキが作り上げられた原動力
第2話より:ザム星人対話するカグラ
第7話より:バモちゃんといるカグラたち
高槻:第1・2話の神澤信一監督は、今でも僕の舞台を観に来ていただいていて交流が続いているんですが、監督からは撮影の中で、基本になる銃の構え方と走り方を徹底して教え込まれました。つまり、ヒーローたるべき立ち振舞いですね。カグラの基本は、勢いがあって元気な子で、もともと強い正義感があるんだけど、それを軸にして“何かを背負っているんだ”という考え方です。これは、ネオスと一体化しているというのもあると思うんですが、ただの明るいお兄ちゃんにならないようにと厳しい指導がありましたね。
第2話では、ザム星人との対話のシーンがあるんですが、最初はこの芝居に戸惑いがあったんです。間近で向き合うと、どうしても造形の方に気持ちが引っ張られてしまったんですね。すごいなぁ、よく出来てるなぁとかっていう、気持ちの上での距離が縮まらなくて、どうしたらいいんだろうって迷いました。でも、気が付くとザム星人も、仲間の事であったり星の命の事だったりと、ちゃんと芝居をしているんですよね。そういうのを肌で感じられる様になると、宇宙人と対峙している特殊な芝居じゃなくて、普通の人間と向き合う芝居と何も変わらないものとして演じようと心掛けられる様になりました。そして、だんだんそれに慣れてきた頃に出会ったのがバモちゃんでした(第7話)。バモちゃんは特に、いつもすごく近くにいたというのがあって印象的です。それからネオスも、海から現れた怪獣を倒さなかったですよね(第3話)。そういう風にネオスだけじゃなくて、物語そのものの優しさみたいなものも、台本を読んだり演出の中で刺激を受けて、徐々にカグラの中に構築していったという感じです。
そしてシリーズが進むにつれて、カグラの心を揺さぶる様な出来事が続きますよね。僕個人としても、カグラの目を通して見た作品の流れであったり、怪獣や宇宙人であったりするんですけど、それを頭で考えながら、ああしよう、こうしようというんじゃなくて、キャストやスタッフさんとの人間関係の中でシンプルな芝居に繋がっていった様な気がするんです。撮影が長く続いていくと、コミュニケーションが積み重なって、学校にいつもいるみたいにどんどん仲良くなっていって、そんな中で、ひとつのシリーズを作っていくんだっていう思いから、緊張感を持ち合ったり、反省もありながら次の話に進んでいく繰り返しがあって…そんな風に、作品に携わっている人たちとずっと一緒にいる中で教わったり、気付かされたりするものから作り上げられたカグラなんだっていう気がします。
先人に思いを馳せる〜ネオスとセブン21のキャラ作り〜
岡野:ネオスのデザインを見ても分かる様に、初代ウルトラマンを強く意識していると思うんです。だから僕も初代ウルトラマンの様な、型にはまっていないアクションをやりたいと思っていました。敵を前にして手が出る、足が出るというのは当然あるにしても、人間っぽくないというのかな。例えば、よく拳を握って胸の前で構えたり動かしたりする様な身振り手振りは、確かに感情を伝える上ですごく分かりやすいと思うんですけど、ちょっと舞台の芝居っぽいなというのがあって。やっぱり映像の作品なので、微妙な顔の傾かせ方とか震えとかで雰囲気を出していきたいなと。カグラとの関係性についても初代ウルトラマンとハヤタの関係性と同じ様に、完全に別個体の宇宙人という感覚でいいと思って、そのつもりで演じていました。なので、カグラの側の芝居に合わせる事は考えていませんでしたね。
寺井:セブン21の方は、ウルフェスのステージだと、ものすごく熱血漢のキャラクターだったんです。でも、僕が演じる事になったセブン21は台本を読むと、落ち着いた冷静なタイプになっていたんです。パイロット版やステージでセブン21を演じていた遠藤城利さんが亡くなられていて、遠藤さんを知るキャスタッフの仲間の思いを背負って演じなきゃならないし、自分の思いも込めたいという役作りの難しさも感じました。
岡野:遠藤とは、僕と2人で交替でグリッドマンを演じていたんですが、恐らく遠藤の中でのセブン21は、一歩引いた立場として僕のネオスを立ててくれていたというのがあると思うんです。パイロット版の撮影は2日位で、特別遠藤と何かを話をしたというのは無いんですけど、その後、長期のステージの中で芝居を深めていったり、僕も周りも含めて高めていこうよっていう思いはありました。でも、その時のセブン21とはガラッと設定が変わりましたからね。だから、遠藤は遠藤のセブン21のキャラ作りがあった様に、寺井の個性で作っていくセブン21を優先してもらいたいと思っていました。
寺井:「お前はお前のセブン21をやればいいんだ」って言われて、気持ちが楽になったところもあります。僕としてはステージの頃からの数年間の時間の中で、いったいセブン21はどんな経験を重ねて、こんなしっかりした人になったんだろう?って考えた時に、なんとなく、かつてのセブン21のキャラクターとカグラの姿が被るところもあったりして、それが昔の自分を見ている様な気持ちでいたりするんじゃないだろうかとか考えて、結果として、ああいうスッとした佇まいになっていったのかなと思います。
ネオスのベストアクション!
第7話より:建設中の家を壊してしまったネオスが慌てて組み立てるシーン
高槻:宮本拓監督は、僕の印象だと“自分が憧れているウルトラマンの監督をしている喜びが凄く出ている人”ですね(笑)。すごいなと思ったのが、飛んできたミサイルをネオスが次々に叩き落としていくシーン(第10話)で、あれはカッコよかったですね。弾かれたミサイルがどんどん隊員の方に飛んでいって爆発するんですが、あの爆発もとんでもない迫力で!
岡野:『ネオス』はオリジナルビデオですが、本編、特撮の製作規模はテレビシリーズと変わらない質でやっていましたからね。
高槻:神澤監督の恐竜コースターの時はビックリでした(第9話)。ネオスが怪獣に跨がってロデオをしたり、怪獣の鼻を指で押さえたり(笑)。掛け声を録るアフレコのスタジオで初めて見た時、いつもと違うネオスで、なんだかカグラっぽいなぁって。
岡野:キングダイナスの時は、それまでやってきた戦い方とは全然違って一番面白かったですね。ロデオも見た事が無かったんですが、現場で監督が真似をしてみせて、こんな感じかなぁと思いながらやっていました(笑)。
高槻:作りかけの家を壊しちゃうのは衝撃でした。慌てて組み立て直したりなんかして(笑)。
岡野:ああいう変化球的な芝居は、普段カッコいいヒーローを演じている自分たちからすると、楽しいですね。
高槻:第11話では、シルエットで飛び出してきてキックして、あれもよかった!
岡野:逆光で目だけ光っているのもいいですよね。
高槻:それから両足開脚キック、あれもすごいなって思って。
岡野:平成ウルトラマン3部作では、タイプチェンジという設定で何人かのスーツアクターがウルトラマンを演じて、いろんなアクションを見せていましたけど、ネオスはタイプチェンジをせずに、1人で全部を出来るといいなと思ってやらせてもらいました。
第11話より:ネオス逆光での飛び出し
周囲との連携プレーで生まれたもの
第7話より:斜面にめり込むカグラ
高槻:小原直樹監督のデビュー作になった第7話ではターザンもやりました(笑)。この時に印象的だったのが、カグラが勢い余って斜面にめり込んでしまう人型のへこみを、現場でスタッフさんが掘って用意していてくれた事でした。第9話の恐竜のでっかい足跡もそうでしたけど、労力がいるし、そうそう簡単には地面なんて掘れないじゃないですか。なのに、あれだけ実感のあるものを作って準備してくれていたっていうのは、作品に対する思いがすごく伝わってきて、演じる人間としては嬉しいですよね。ホントに感動しました。
寺井:僕は岡野さんたちともイベントの現場で一緒にショーのステージに立たせてもらっていてなんとなくアクションの呼吸というか、お互いのやり取りが分かった様なつもりになっていたんですが、第4話のネオス・セブン21と怪獣2体との戦いは、もう岡野さんはじめ、怪獣を演じた三宅敏夫さん、横尾和則さんたちに怒られっぱなしでした。撮影でのアクションはショーとは全然違って、気にしなきゃいけない事が変わってくるんだと再認識して痛感しました。でも、みなさん怒りながらも何テイクも付き合ってくれて、感謝の思い以外ありませんでした。第6話のザム星人が化けた女との格闘では、人間の姿をした相手と本気で戦うってキツイなと思っていたところがあったんですが、ここで僕が気後れしちゃうとそれが画面に出てしまうんじゃないか、セブン21として毅然としなきゃいけないと、かなり意識して取り組みました。足場も悪くて大変だったんですが、編集さんの方でキレよく仕上げていただいて、こちらも本当に感謝しかありません。
高槻:僕ら隊員たちの間では最初、隊長の嶋田久作さんが気難しい方なんじゃないかっていう噂があって、身構えていたところがあったんですよ。ところが実際会ってみると、お茶目でなんて気さくな方なんだろうって(笑)。そんな事がうまくはたらいて、隊員たちの距離が一気に縮まったんです。ヒノ隊員役の森田猛虎くんもオーディションの時から一緒だったんで掛け合いも一緒にやったり、そういうものも含めてどんどん打ち解けていって和気あいあいとやっていったからこそ、第10話での隊長のピンチに、それぞれの役に思いを乗せた芝居が出来たんだって思います。この話は、あのメンバーで撮っていたことの意味がものすごくあったと思っています。誰かが一生懸命に何かをやるっていう事は、人の心を動かしますよね。その分、自分も頑張って、相手の気持ちに報いる様にやりたいなって。今から振り返ると、やっぱりそこには愛があったなって思いますね。
どうやって演じる!? 2大パニックシーン秘話
第9話より:子どもたちと会話をするシーン
寺井:第9話の恐竜コースターの作業員が子どもたちと会話をするシーンがありますよね。僕と岡野さんが一緒にいて、上の方に横尾さんがいるんですけど…本当はこのシーンに僕はいないはずだったんですよ。もともと僕のポジションは三宅さんが演じるはずだったんです。でも三宅さんは第3話のキャンプ場のシーンに怪獣と出ているからダメだって事になったらしく…昼飯中でしたよ。撮影の1時間くらい前に岡野さんがやってきて台本をポンと渡されて、「今から台詞を覚えろ」って! 慌てて読んでみたら、そこそこ子どもたちとのやり取りがあるじゃないですか。もともと役者業に行きたい気持ちはあったんですけど、心の準備も無いまま急に撮影って…僕はどちらかと言えば入念に準備をしたい方なんです。降って湧いた話ですけど、しっかりやり遂げなきゃと思いつつ…芝居の段取りも考えてないし、まして岡野さんもいるのにとかの混乱ぶりから、あのシーンで僕だけが作業着が半脱ぎ状態なんです。大慌てで着替えて現場にダッシュで向かって、そのままパッと登ったからちゃんと着れなかっただけなんですけど、結局、あの格好がひとつのキャラクターになっていますよね…これが僕の円谷作品の顔出しデビューになりました(笑)。
高槻:これは初めて話すんですけど…僕はあまりに難しくて芝居が出来ない!って、現場から逃げ出した事があるんです。ザム星人の使命とか命のありようって凄く難しい問題じゃないですか。後々のザム星人のエピソードにも関わるので、カグラの気持ちを一本通さなきゃいけないなという思いがありましたけど…でも、他の惑星での命の価値観を受け止めて、葛藤しながら芝居に説得力を持たせるっていうのは、ものすごくエネルギーが必要だったんです。命の尊さという事なら、誰でも同じなんでしょうけど…。
岡野:人間の意識だけの理解じゃないからね。
高槻:だから最終回でのザム星人の少年の前での決意の芝居は、もう二重の重さで相当難しかったですよ。髙野(敏幸)監督からも説明があるんですけど、頭に入ってこなかった。それでもうパニック状態。その後、録音技師の楠本龍巳さんが来て「まぁ、気持ちも分かるよ」って30分位なだめてくれて…。自分の命にしたって考え始めると、何で生きてるんだろう?って思うし、何が正解なのかも分からない。滅ぼすのは絶対的に駄目だよなって分かりますけど、答えには行き着かない。今でも難しいテーマだなぁと思います。
『ウルトラマンネオス』を愛するすべての方々へ
高槻:今だからこそ『ネオス』の物語は、より心に刺さるというのはあるかもしれないですね。ウルトラマンシリーズって、子どもの頃に一度見ただけでは気付けなかったテーマが散りばめられていたりして、もう一度見てみようかなって思いますよね。それは『ネオス』も同じで、当時演じていた自分では気付けなかったけど、スタッフの皆さんのおかげでそういうドラマになっていて「なるほど、だからあの時、こういう風に語っていたんだな」っていうのが分かります。ほかの星の命、隊長の命…バモちゃんの生態系もそうですよね。生物が絶滅する・しないという話でもあるし。
岡野:だけど、ひとつひとつが楽に見れますよね。見る年齢によって感じ方も変わるけど、ちっちゃい子でも簡潔に見られる、絶対に飽きない作品だって思います。
寺井:僕自身にとっても『ネオス』は原点になる作品だったのは間違いなくて、その中で未来の自分の夢を思い描きながら挑んでいたんですが、それは作品の中に登場するキャラクターの成長にも重なるところがあって。自分も岡野さんたちに支えられてきた様に、セブン21も、カグラなりネオスに表舞台での戦いを委ねて、自分はその傍らで、戦うだけじゃ解決出来ない人の心を助けていった。そういう、見えないけれど繋がっている絆が伝われば嬉しいなと思います。
高槻:純粋なM78星雲・光の国の戦士っていう、僕が子どもの頃に憧れたシンプルなウルトラマンと同じ感覚の『ネオス』の中から、オーソドックスで何も飾らない、いちばんストレートなウルトラマンの世界を感じてもらって、新しいファンが増えてくれたらいいなと思います。それからメイキングも付いているので「こうやってみんなで一生懸命作ってるんだよ!」っていうところも含めて感じてもらえたら、最高ですね。
ウルトラマンネオス Blu-ray BOX
Blu-ray BOXではHDリマスター2.0Vによる本編リマスターのほか、
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¥13,800(税抜) 特典ディスク(Blu-ray)/ブックレット
※パッケージ等は変更になる場合もございますことご了承ください。
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