前作『帰ってきたウルトラマン』でメディアミックス面、マーチャンダイジング面での大成功を収め、更なる成功の期待もかけられた本作品は、「ウルトラの総決算、総力戦」をスローガンとし、作品序盤から全力投球を目指していくものとされていた。ウルトラ兄弟の設定を映像上で本格的かつ絢爛に描いたところでさらに隠し玉的に、兄弟を束ねる屈強なる統率者、ウルトラの父が登場。
文字通り“スター級ヒーローを惜しみなく投入するオールスターゲーム”的様相を呈したのも、この「総決算」の狙いゆえである。外せない要素に目を配っただけでなく、他社作品の特徴も研究して取り込み、新味創出を図ったところも本作品の特色だ。
それが既存の生物に改造を加えた生物兵器という恐怖をまとう、怪獣を超える存在「超獣」と、その恐ろしき生物併記を
手足のごとく操るシリーズ初の固定の巨悪、人間の善意を揺さぶり続ける悪魔・「異次元人ヤプール」のこれ以上ないスタープレイヤー、それと白熱のバトルを演じるに見合う強大な敵の配置を持って、『ウルトラマンA』の独特のカラーが決定づけられ、放送当時も大人気を博し、そして、本作品で試みられた数々の新機軸が40数年を経てなお、現在のウルトラマンシリーズに有形無形の影響を及ぼし続けているのである。
前作の良さも受け継ぎながら、娯楽性も損ねず、シリーズの決定版にするという大きな使命を負った『ウルトラマンA』。王道も新機軸も並列に存在させる複雑な陰影を帯びることになった本作品だが、その新機軸の代表例が、シリーズ屈指の画期的発想である「男女合体変身」のコンセプトだった。
立ちはだかる異次元人ヤプールは人心を堕落させる究極的な悪。それを打ち砕くにはヒーロー側も従来を超えた愛情、優しさに満ちていなければならない。そのために、ひと組の男女が合体し、愛も優しさも完全な形で示し得る超人になる必要がある。男女合体変身にはこんな発想と意図が込められていたのだ。性差を超えて現れるウルトラマンエースが数々の苦難や試練を次々と克服して乗り越え、より完全な正義の超人へ成長していくドラマが本作品の大きな見どころになるはずだった。しかし、この究極的悪や男女合体超人という概念がいささか観念的すぎ、必ずしも作品の理解、人気を後押しし得なかった側面は否めない。しかし、それでもスタッフは諦めずに、苦難や試練に遭っても乗り越えていく「努力」を説く物語として本作品に向き合い続けた。やがてそれは「歯を食いしばって頑張り抜いたとき、超人になり得る未来が開ける」=「ウルトラの星が見える」という形へと昇華していったのである。
これ以上はないシリーズの決定版!
超人が「試練」に打ち勝っていく物語